【No.11】-第2回-家での学習で起きる「つまずき」のメカニズム
家での学習で起きる「つまずき」のメカニズム
前回は、授業中の「分かった気がする」という感覚と、実際に一人で問題を解けることの間にある違いについてお伝えしました。
今回は、家に帰って一人で問題に向き合ったときに、具体的に何が起きているのかを見ていきます。
一人で向き合ったときに起きること
授業が終わり、家に帰って机に向かう。問題集を開き、「今日習ったところをやってみよう」と思う——ここまではスムーズです。
しかし、実際に問題文を読んだ瞬間、こんな経験をすることがあります。
パターン1:最初の一歩が踏み出せない 「この問題、どこから手をつければいいんだろう?」と、白紙のノートを前に固まってしまう。授業では先生が「まず、ここから始めます」と示してくれましたが、一人になるとその「最初の一歩」が見えなくなります。
パターン2:途中までは進めるが、その先で止まる 最初の計算はできた。式も立てられた。でも、その先で「あれ、次はどうするんだっけ?」と手が止まる。授業中に見た解法の流れは覚えているのに、細部が思い出せない状態です。
パターン3:解説を読んでも、よくわかっていない 答えを見て解説を読む。「ああ、こうやるのか」と一瞬は分かった気がするけれど、いざノートを閉じると、また同じところで迷ってしまう。理解が表面的なままで、自分のものになっていない感覚です。
なぜ一人になると止まるのか
授業中はできていたのに、一人になると止まる——この現象には、明確な理由があります。
授業では、思考の道筋が示されている状態でした。先生が「次はこうします」と進めてくれるため、自分で判断する場面が少なかったのです。
しかし一人で問題を解くときは、すべての判断を自分で下さなければなりません。
- この問題は何を求めているのか?
- どの公式を使えばいいのか?
- 次に何をすべきか?
- この計算で合っているのか?
授業中は先生が担っていたこれらの判断を、今度は自分一人で行う必要があります。この「判断の連続」が、一人での学習を難しくしている大きな要因です。
「分からない」を放置すると何が起きるか
問題につまずいたとき、その場で確認できれば、考え方はすぐに整います。
しかし実際には、こんな状況になりがちです。
「う〜ん、分からないな……でも、明日また授業があるし、そのとき聞けばいいか」 「今さらこんな基本的なこと、聞きづらいな……」 「まあ、なんとなく分かった気がするし、次に進もう」
こうして、分からないまま時間が過ぎていきます。
すると、次に起きるのがこんな状況です。
質問できない時間が生む悪循環
ステップ1:小さな「分からない」が残る 授業後、一人で問題を解こうとして躓く。でも、確認せずに次へ進む。
ステップ2:似た問題でまた躓く 数日後、同じような問題が出てくる。前回と同じところで止まるが、「前もできなかったし……」と諦めてしまう。
ステップ3:「分からない」が積み重なる 分からない部分を抱えたまま新しい単元に進むと、その「分からない」が土台になっている問題で、さらに躓きます。
ステップ4:数学への苦手意識が育つ 「自分は数学が苦手なんだ」という感覚が生まれ、問題に向き合うこと自体が億劫になってきます。
この悪循環の恐ろしいところは、最初のつまずきはとても小さいという点です。
「ここの式変形がよく分からない」 「この考え方の意味がピンとこない」
こうした小さな「?」を、その場で解消できていれば、後の大きな躓きは防げたかもしれません。
本当の問題は「分からないこと」ではない
ここで大切なのは、分からないこと自体は、まったく問題ではないということです。
むしろ、分からない部分があるのは自然なことです。新しいことを学んでいるのですから、すぐに完璧に理解できるほうが珍しいでしょう。
本当の問題は、分からないまま時間が過ぎることにあります。
分からない部分を確認できないまま次へ進み、似たような問題で再び躓き、「やっぱり分からない」という経験を繰り返す。この繰り返しが、数学への不安や苦手意識を育ててしまうのです。
まとめ:つまずきは「確認不足」のサイン
家での学習で起きる「つまずき」は、能力の問題ではありません。授業中には見えにくかった「確認不足」が、一人の時間になって表に出てきているだけです。
大切なのは、つまずいたときに「ああ、自分はダメなんだ」と考えるのではなく、「ここを確認すればいいんだ」と捉えることです。
では、どうすればその「確認」ができるのでしょうか。次回は、授業と練習のあいだに必要な「確認できる環境」について考えていきます。
〈次回予告〉 第3回:「確認できる環境」が学びを変える ——理想的な学習環境とは何か
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